CFOメッセージ

社会が抱える課題に正面から取り組む
企業として、財務の健全性を遵守しながら、
資本効率性を重視した成長投資、
収益構造の筋肉質化を通じて、
持続的な成長を進めます。
取締役
常務執行役員 CFO
中庭 聡

2020年度の振り返り

2020年度は、お客さまの生活スタイルや購買行動の変化など、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた1年でした。そのような厳しい経営環境下においても、ローソングループは「マチのほっとステーション」として常にお客さまや社会に寄り添い、果敢にチャレンジしましたが、2020年度の営業利益は408億円、親会社株主に帰属する当期純利益は86億円と、2019年度対比で減益を余儀なくされました。
国内コンビニエンスストア事業は、既存店売上高前年比92.7%と、客数がリモートワークの浸透や外出機会の減少などにより85.8%と前年を下回りましたが、客単価は自宅で食事するお客さまが増加したことに対応し品揃えを拡充した冷凍食品、日配食品、生鮮食品などが伸長し108.0%と前年を上回りました。継続的にコスト削減に取り組んだものの、既存店売上高の影響は大きく、国内コンビニエンスストア事業のセグメント利益は287億円(前年比183億円の減益)となりました。
新型コロナウイルス感染症の影響が特に大きかったエンタテインメント関連事業は、セグメント損失2億円(前年比56億円の減益)でした。厳しい経営環境が続く1年でしたが、ローソンエンタテインメントでは、イベントの中止・縮小などが続く中、オンラインライブ配信チケットやEC事業の拡大に取り組みました。また、ユナイテッド・シネマでは、一時全館休業を強いられましたが、下期には人気アニメ作品の大ヒットなどがありました。
成城石井事業では、消費者の方々の巣ごもりによるスーパーマーケット需要の高まりを背景にご支持をいただき、セグメント利益は103億円(前年比19億円の増益)、新型コロナウイルス感染症の影響から早期に回復した中国事業など、海外事業ではセグメント利益8億円(前年比18億円の増益)と黒字化しました。
このように、ローソングループのセグメント別にはプラスとマイナスの両面がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として政策保有株式の売却益を計上したものの、営業利益の減益要因に加え、特別損失として店舗関連の減損損失、新型コロナウイルス感染症の関連損失などを計上したことから86億円(前年比114億円の減益)となりました。
2020年度(2021年2月期)連結業績 セグメント利益

経営目標の達成に向けた収益構造の筋肉質化

2020年度は、厳しい経営環境下でしたが、コスト削減に注力しました。フランチャイズ加盟店では、廃棄ロス、人件費、水道光熱費の三大コスト削減に取り組んだ結果、第2四半期以降の加盟店利益は前年を上回りました。また、デジタルを活用した広告宣伝の見直しや、地代家賃の削減にも取り組みました。
ローソングループが設立50周年を迎える2025年に向けて策定した「Challenge 2025」においては、大変革実行委員会の主導のもと、さらなる収益構造変革を実行します。例えば、顧客起点サプライチェーン改革プロジェクトならびにベンダー物流改革プロジェクトでは、AIやDXなどを活用し、店舗及びサプライチェーンにおける廃棄ロスと機会ロスの両方について削減を目指すなど、ローソングループとして収益構造の筋肉質化を進めます。
2021年度の通期計画では、新型コロナウイルスワクチン接種が広がりつつあるものの、新型コロナウイルス感染症の収束には未だ時間を要することを前提とし、お客さまのニーズの変化に合わせた商品の品揃えなどによる既存店売上の改善や、エンタテインメント関連事業の回復などを織り込み、連結営業利益500億円(前年比+91億円)、親会社株主に帰属する当期純利益135億円(前年比+48億円)を計画しています。

財務健全性の遵守と株主還元

「Challenge 2025」では、ROE15%以上を目標とし、連結配当性向50%を支える純利益の水準としてのEPS500円以上を指標にチャレンジしていきます。ローソングループでは、株主の皆さまへの利益還元を経営の重要課題と位置づけ、ROEを重視しています。そのROEを表す「売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」の各要素を改善すべく、前述の収益構造の筋肉質化とともに、資本コストを踏まえた投資基準や既存投資入れ替えなどにより財務状況の筋肉質化を進めます。一方で、ローソン銀行を有するローソングループとしては財務健全性を遵守することが有利な資金調達、収益性の改善につながります。ローソングループの持続的成長の中で、財務の健全性を遵守しながら、資本効率性を高めていくバランスあるマネジメントが重要であると考えます。
そして、株主還元も、非常に重要な経営課題として位置づけています。財務の健全性を遵守しつつ業績に応じた利益還元を行う連結配当性向の考え方に基づき、1株当たり150円を下限とし、将来の事業展開に必要な内部留保を維持しながら、「Challenge 2025」による持続的な利益成長を通じて、持続的な配当金の成長を図っていきます。

大変革実行委員会での資本効率性を重視した成長投資

お客さまや市場の急速な変化のみならず、現在進行形でさまざまな技術革新が進んでいます。最新の技術を活用の上、適切な投資とすべく、大変革実行委員会による投資計画については、PDCAを高速で回し、日々アップデートしながら柔軟かつ継続的に取り組んでいきます。
その中で、国内コンビニエンス事業の売場大変革を目指す店舗理想形追求プロジェクトでは、2021年5,000店を対象として320億円程度の投資を計画しています。商圏や立地・客層等の特性に応じた店舗改装を視野に入れ、現在、きめ細かい検証を繰り返しています。また、成城石井事業では、お客さまの需要の高まりに合わせたセントラルキッチンの増設、営業黒字化した海外事業ではさらなる店舗数の拡大などを計画しています。投資に関わるリスクとリターンの精度を高め、資本効率性を重視した成長投資の最大効用の実現により、ローソングループの資産効率の向上を目指します。

ESG経営を通じたSDGsへのコミットメント

環境問題については、2050年に向けた環境ビジョンである「Lawson Blue Challenge 2050!」により、食品ロス削減、プラスチック削減、CO2排出量削減に取り組みます。その一環として、既存店改装や更新投資の過程で、環境に適合した店舗関連資産への入れ替えを実施していきます。
資本市場では、ESG投資に大きな注目が集まっていますが、ローソングループではSDGsへのコミットメントを表明しています。もとより、ローソングループは、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」というグループ理念のもと、コンビニエンスストアという社会インフラとして、地域社会への貢献や働き手不足への対策など、お客さまのマチの社会課題に正面から取り組んできました。そして、今後も私たちの役割に変化はなく、従来の取り組みの延長線上にESG経営を通じたSDGsを捉えています。いかなる市場環境下においても、ローソングループはお客さまと社会のレコメンドNo.1であることを目指し、今後の持続的成長と企業価値の創出に取り組んでいきます。