社長メッセージ

マチの幸せと発展を支える
新たなコンビニエンスストアの実現に向け、
変革を加速していきます。
代表取締役 社長
竹増 貞信

理念に立ち返る

新型コロナウイルス感染症の拡大は、100年に1度ともいうべき大きな変化を世の中にもたらしました。生活そのものを変えていくことを余儀なくされ、人々の行動と価値観を変えてしまったと感じています。こうした変化の中で、私が大切にしてきたのは、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」というグループ理念に立ち返り、ローソングループの一人ひとりの仕事がマチの幸せの提供につながっていくのだという、私たちの社会における存在意義を改めて見直すことでした。
コンビニエンスストア事業は、いかに変化に対応できるかが重要です。これまでもローソンは、フライドフーズの販売、郵便ポストの設置、店内コピー機での住民票の発行、そして店内厨房など、商品、サービス両面でその時代、時代の社会ニーズに応えた新しい便利さを提供してきました。日々のちょっとした変化、あるいは、時代の節目となる大きな変化、それらマチの変化を逃さず捉え、その変化に対応して絶えず新しい価値を提供していくためには、私たち自身が変化し続けることに挑戦しなければなりません。そしてその原動力となるのが「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」というグループ理念であると考えています。ローソングループの一人ひとりが常にその思いを持ってあらゆる仕事に挑むことが、加盟店の皆さんの発展や幸せにつながり、さらにはマチの幸せにもつながっていく。そしてロ―ソングループも発展していく。そうした流れを創ることが私の役目であると考えています。
グループ理念 グループ理念

加盟店とともに成長していくために、加盟店を守る

コロナ禍以前においては、人手不足に伴う、お店の生産性と収益の向上が大きな課題の一つでした。その対策として、2015年に加盟店の負担軽減のため、人工知能(AI)を活用した「セミオート発注システム」を導入し、仕入業務の精度を高めるとともに発注業務の時短に取り組みました。2017年度から2019年度にかけては、店舗へのIT投資を加速し、オペレーションの効率化に注力し、店舗のワークスケジュール管理を容易にするためのタブレット端末の全店配置、シニアクルー、外国人クルーでも容易にレジ業務を行えるよう「自動釣銭機付POSレジ」の導入、お客さまがスマートフォンで商品をスキャンし決済する「ローソンスマホレジ」の導入などを実施しました。これらの取り組みは、非常に大きな成果があがったと考えています。
2020年3月以降、新型コロナウイルス感染症が急速に拡大し、4月には1度目の緊急事態宣言が発令されたことで、店舗の売上が大きく落ち込みました。ローソングループには、加盟店から直接私へメッセージを送ることができる「社長直行便」という制度があります。先行きの見えない状況の中、社長直行便には不安を訴える声が多く寄せられました。そこで加盟店と店舗クルー、何よりご来店されるお客さまの安全を第一に、感染対策の徹底を行い、さらに、収益が落ち込み営業が厳しい加盟店に対しては支援も行いました。この時期は、「加盟店は本部が守る」というメッセージを発信し続け、本部一丸となって加盟店を支えることに注力しました。私たちには加盟店を守るという責任の一方で、厳しい環境の中でも事業の継続だけでなく、事業を成長させていくという責任もあります。コロナ禍の当初は、店舗の3大コストである人件費と食品の廃棄ロス、光熱費をコントロールすることで加盟店の利益を確保することを目指しました。これまでのIT投資が店舗オペレーション効率化において非常に有益でした。
また以前から、昼食だけでなく朝食や夕食もローソンを利用していただくための商品強化を進めていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大が続く中で、遠くのスーパーよりも近くのローソンでというお客さまからの期待が高まり、これまで来ていただけなかったお客さまに来ていただけるようになるなど、お客さま層にも変化が見られました。結果的に2020年度は、2019年度並みの店舗利益を出すことができ、加盟店からはコロナ禍で本部と一緒に頑張ってきたことが、きちんと形になって現れてきている、ローソンをやっていてよかったという声をいただくことができました。
レジカウンターへのビニールシート設置による感染対策 レジカウンターへのビニールシート設置による感染対策 セルフレジ活用による接触回避 セルフレジ活用による接触回避

アフターコロナに向けた新たなコンビニエンスストアの実現へ

日本経済が本格的に回復に向かうのは、ワクチン接種が進む2021年末以降と考えています。しかし、その後も新型コロナウイルス感染症の拡大と縮小が断続的に続くことを予想しており、人々の生活環境がコロナ前に戻るのは、もう少し先とも考えています。
こうした市場環境の中、コンビニエンスストアの“便利さ”が再評価されつつあると感じています。前述の通り、これまでもコンビニエンスストアは、マチの変化に対応することで成長してきました。また、自然災害をはじめとした大きな変化を何度も乗り越える中で、社会インフラとしての役割も重要さを増してきました。コロナ禍による環境の変化に加え、少子高齢化や気候変動など、社会課題への対応が求められ、世の中が変化し続ける現在、コンビニエンスストアがどのように変化すべきか、今まさに問われていると感じています。
ローソンが創業50年となる2025年に向けて策定した中期経営ビジョン「Challenge 2025」は、ニューノーマルによる変化に対応し、その先にある「新しい便利」を提供する「新・マチのほっとステーション」を目指すものであり、ローソングループ一丸となり取り組んでいきます。
コンビニエンスストアは、全国一律の平準化モデルで発展してきましたが、これからは違います。そのエリア、マチ、店舗の立地によってお客さまが求めるものはそれぞれです。そのご要望にきちんと向き合い、応えていくことが「新しい便利さ」の提供につながります。
例えば、都心部にある店舗はスピード重視の“便利”が求められる一方で、郊外で幅広い年齢層にご利用いただいている店舗は、子どもや高齢者を見守る役割を果たしているなど、店舗により求められる役割はさまざまです。私たちは、「短時間で必要なものがすぐ買える」という便利さだけではない価値を提供していきます。
さらに、社会課題への取り組みも進めており、ケアローソン(介護拠点併設型店舗)における新型コロナウイルスワクチン接種予約相談会の実施や、店舗の駐車場に検診車を用意し定期健診を受けられるサービス、高齢のお客さまなど買い物のための外出が難しい方のための移動販売などは、新しい“便利”を体現したものといえます。
こうした新しい“便利”を提供できる場所が「新・マチのほっとステーション」であり、「Challenge 2025」で私たちが目指すコンビニエンスストアの新しい姿です。これに向けた変革を進めることが「お客さま・社会・仲間(加盟店や従業員など)」からの「レコメンドNo.1」の獲得とともに、グループ理念である「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」の実現につながると考えています。
Uber Eatsによる店舗からの医薬 品のお届け Uber Eatsによる店舗からの医薬 品のお届け ケアローソン(介護拠点併設型店舗)における新型コロナウイルスワクチン接種予約相談会の実施 ケアローソン(介護拠点併設型店舗)における新型コロナウイルスワクチン接種予約相談会の実施 小容量の惣菜を「マチのデリ」シリーズとして販売(展開エリア:関東·近畿地区の一部のみ) ※商品画像はイメージです。 小容量の惣菜を「マチのデリ」シリーズとして販売(展開エリア:関東·近畿地区の一部のみ)
※商品画像はイメージです。

大変革実行委員会を通じ、
あらゆる分野で変革を

リモートワークの浸透や外出自粛などにより、オフィス・繁華街の店舗の来客数が減り、一方で、住宅立地の店舗では必要とされる商品に変化が起きました。ローソンはコロナ禍で厳しい局面を迎えましたが、従来と異なる需要が増えたことはチャンスでもあります。変化対応への実行スピードを上げ、このチャンスを取り込むべく、私自らが委員長を務める「ローソングループ大変革実行委員会」を2020年9月に立ち上げました。
「大変革実行委員会」は、「Challenge 2025」の中核的存在であり、「売場大変革」「収益構造大変革」「事業会社」「働きがい大変革」の4つの大変革を行うテーマを設け、そこに連なる12のプロジェクトと脱炭素活動から構成されています。
「売場大変革」に連なる店舗理想形追求プロジェクトでは、リモートワークの浸透や外出自粛により、近場での買い物や自宅での食事ニーズが高まることを受け、日常的に生活必需品をより購入しやすい店舗を目指した改装を推進します。まず、2021年5月から先行改装店として500店舗を改装しており、それらの店舗から得られるさまざまなデータをその後の店舗改装に活用しています。例えば、同じ立地条件でも売れる商品や来店客数などが異なるため、店舗の設備をはじめとした諸条件がどのような影響を持つかデータによる分析を行っています。これにより、決まった改装メニューで一律に店舗改装を行うのではなく、店舗ごとにデータに基づく最適な改装を行い、より高い効果を目指しています。なお、先行改装店では順調に日販改善効果が得られているため、2021年度は最大5,000店まで改装を拡大する計画としています。また「売場大変革」に連なる厨房プロジェクトでは、コロナ禍で外食の機会が減ったお客さまの需要にお応えし、伸長を続ける「まちかど厨房」を拡大していきます。店内キッチンで調理しその場で提供できるため、お客さまの需要に柔軟に対応できます。2021年7月末時点で7,000店に導入していますが、2021年度中に最大8,400店へ拡大する計画です。
その他、日用品にも力を注ぎます。これまでのコンビニエンスストアでは、日用品の需要は緊急購買が中心でしたが、日用品需要を指名購買へと変化させていきたいと考えています。その一環として「無印良品」の商品を取り扱う実験を100店規模で開始しています。
「収益構造大変革」では、無駄をなくし収益構造を改善することや既存の資産を活用し収益化につなげることなどを進めています。顧客起点サプライチェーン改革プロジェクトでは、IT技術やAIを活用することにより、サプライチェーンの各所で起きている廃棄ロスを削減する取り組みや、最適な物流網構築などに取り組んでいます。グループデータ一元利活用プロジェクトでは、グループ企業が各々活用していた自社の顧客データを、一元的に活用ができるようにすることで、お客さまをより理解し個別のニーズへ応えていくことに取り組んでいます。
「働きがい大変革」では、チャレンジ意識を高めるための評価制度の再検討や、グループ社員の交流促進などを通じて、重要な人的資本であるローソングループ社員の「働きがい」を醸成する取り組みを行っています。
日常使いの冷凍食品を販売 日常使いの冷凍食品を販売 揚げ物惣菜の個包装セルフ販売 揚げ物惣菜の個包装セルフ販売 店内調理サービス「まちかど厨房」 店内調理サービス「まちかど厨房」

大変革実行委員会を通じ、あらゆる分野で変革を

組織体制

組織体制 組織体制

主な実施事項

売場大変革
新しい生活様式・価値観に適応した日常生活必需品を目的購入されるお店づくりの実現
収益構造大変革
あらゆるコストの見直しと収入増へのチャレンジによる加盟店・本部・事業会社の収益力向上
事業会社
グループの総力を横断的に結束した新しい価値提供への挑戦
働きがい大変革
加盟店・本部・グループ会社全員の働きがい改革継続実行

ローソングループ全体でチャレンジ

大変革実行委員会では、セグメントの各事業会社の持続的な成長にも取り組みます。中国事業は、2020年度に3,000店を突破して営業利益ベースで黒字化を達成し、2021年には4,000店を突破。中国における日系コンビニとして最大です。店舗数の増加と現地での認知度向上により、収益力も増しています。しかし、人口当たりの店舗数は日本に比べまだ少ないため、これからも出店の余地はあると考えています。コロナ禍の中、中国ではコンビニエンスストアに対し、社会インフラとして機能することが求められました。必要とされている地域へ店舗網を拡大していくことで、中国のお客さまにとっても“なくてはならない存在”になっていきたいと考えています。これまでも自社で出店することに加え、現地パートナーとのエリアライセンス契約により店舗を増やしてきましたが、今後はさらに優良な現地パートナーと協力し合い事業拡大にチャレンジしていきます。
成城石井事業は、コロナ禍によるスーパーマーケット需要の高まりを背景に生鮮品などが伸長したことに加え、強みである自家製惣菜が堅調に推移し2020年度も増益となりました。2022年春にセントラルキッチン新工場の稼働で店舗網の拡充を図り、さらなる成長を目指していきます。エンタテインメント関連事業は、コロナ禍によるイベント開催制限等の影響を受けましたが、オンラインライブ配信視聴チケットの取り扱い拡充やeコマースを活用した巣ごもり需要対応などにより回復傾向です。今後もオンラインライブ配信の活用などによるニューノーマルの時代に合ったエンタテインメントビジネスの構築にチャレンジしていきます。また、シネコン事業もコロナ禍の中お客さまがエンタテインメントに触れられる数少ない場を提供できた経験を踏まえ、今後もお客さまにワクワクするエンタテインメントをお届けしていきます。金融関連事業は、提携金融機関の拡大を続けている一方、ATM及びATM決済ネットワークを活用したさまざまなサービスを展開しています。今後もサービスの拡充とともに、新たな取り組みで収益基盤の強化を図っていきます。
ローソングループ全体でチャレンジ

社会課題解決にも資するDX

従来の店舗運営効率化の取り組みは続ける一方、さらなるDXとAI活用により、前述の顧客起点サプライチェーン改革プロジェクトを中心に、食品廃棄ロス削減も見据えたサプライチェーン全体の最適化に取り組んでいくべきと考えています。三菱商事のサプライチェーンにおける知見と、同社が業務提携したNTTのデジタル技術を駆使し、食品発注の最適化など、サプライチェーンの最適化を目指しています。2021年6月には東北エリアでAIを活用した値引き販売推奨の実証実験を開始しました。また、KDDIのスマートフォンの位置情報とローソンの購買履歴から、来店が予測されるお客さまへ、販売期限が迫ったおにぎりやサンドイッチの値引き情報を通知する計画も進めています。これまで以上に商品を売り切ることにこだわっていきます。DXは、効率化・便利さの追求及び収益改善だけでなく、社会課題や環境問題の解決のためにも重要であり、積極的に取り組んでいくことを考えています。

Challenge2025のチャレンジ指標に向けて

「Challenge 2025」では、チャレンジ指標「ROE 15%以上、EPS 500円以上」を掲げています。コロナ禍で事業環境が大きく変化し、売上にも影響を受けていますが、この変化をチャンスに変えるべく、対応を進めています。変化対応することで我々の可能性が大きく広がるものと考えています。ここ数年の積極的なIT投資は、2020年度から投資効果を生む計画でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大により、その効果を測ることが難しくなりました。しかし、違った視点から見ると全く異なる効果を生んでいます。2019年に全店導入が完了した「自動釣銭機付POSレジ」は、当初、レジ精算の精度向上や効率化で、主に人手不足対応への効果を期待したものでした。コロナ禍で人との接触が問題になる中で、同レジはセルフレジとしても使用することが可能であり、お客さまのご要望に応えることができました。このように変化に機敏に対応し需要に応えていくことで、お客さまに持続的に店舗を利用いただけるのです。小さな積み重ねの集積が全体の売上向上の力になります。このような変化対応をスピード感をもって具現化していくのが「大変革実行委員会」であり、チャレンジ指標に向けて、いかにマチの変化を捉え、いかに個店個店をその変化に柔軟に合わせていくかが重要なポイントと考えています。 2025年チャレンジ指標 2025年チャレンジ指標 2025年チャレンジ指標 ESG基軸経営 ESG基軸経営

持続的な成長と持続可能な社会の実現に向けて

ローソンは、ローソングループの持続的成長と持続可能な社会の実現に向け、2019年3月1日付でSDGs委員会を設置、さらに2021年3月1日付で、CSO (チーフ・サステナビリティ・オフィサー:最高サステナビリティ責任者)を設置し、私自らが就任しました。事業方針である3つの約束「圧倒的な美味しさ」「人への優しさ」「地球(マチ)への優しさ」への取り組みを通じて、6つの重点課題(マテリアリティ)及びこれに対応する「SDGs (持続可能な開発目標)」における課題解決へ取り組んでいます。そして、ローソングループの持続的成長と持続可能な社会の実現に向け、Challenge 2025の中で、ESGを基軸とした経営を志し、チャレンジ指標に向けた取り組みにおいては「環境・社会・企業統治」の3つの観点で投資対象を戦略的に選択していくことを掲げています。

最後に、ローソングループには約18万人の仲間がいます。私を含め、仲間同士がお互いの良さを認め、高め合える組織にしたいと考えています。持続可能な社会の実現に向けて、日本でも世界でもマチマチにリアルな店舗を構えるロ―ソンだからこそできることはたくさんあります。みんなと暮らすマチを幸せにするために、私たちはチャレンジを続けていきます。