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2014年8月25日

カテゴリー: 蓼山 陵さん 「コンビニ探訪社会学」

農業再生・活性化とコンビニの役割<前編>

 

日本農業の論点「食料自給率」のフシギ

 農業改革が叫ばれている。「先進国中最低の食料自給率」「農業人口の減少、高齢化」「耕作放棄地の増加」――。いずれも解決が迫られている問題であることに間違いはない。しかし、農業の問題は、単なる国内問題にとどまらないうえ、安心・安全、経済性、国際性とさまざまな要素が複雑に絡み合ってくる。
この数年、食の安心・安全を追求するコンビニ業界も、農業への関わりを強化している。それは、農業が国民生活と直結しているからにほかならない。
農業問題は、考えれば考えるほど奥が深いテーマで、政策テーマとして扱う以上、利害関係者ばかりでなく多様な関係者の意見、提言を採り入れていくことが不可欠だ。前例主義、固定観念にとらわれないフレキシブルな考え方が必要となってくる。

 具体的にみてみよう。農業問題で必ずクローズアップされるのが「食料自給率」である。メディアには「日本の食料自給率、2012年度横ばいの39% 農水省」といった見出しが躍る。そして記事の中にはこんな表現が出てくる。「政府は2020年度に50%に引き上げる目標を掲げているが、3年連続で40%を下回った」。

 そうか、3年連続で自給率が4割を切ったんだ。これは大変だ。多くの国民はそう思うはずだ。そこへ追い打ちがかかる。
「TPPに加盟すると、自給率は13%まで落ちる」(農水省試算)といった衝撃的な数字が出てきた。輸入品目の生産国が異常気象に見舞われて凶作になり、輸出禁止措置が取られたら、日本の食糧需給はどうなってしまうのか。こういった危機シナリオまで語られるようになったのである。

 しかし、物事はそんなに単純ではない。問題の根本にある「食料自給率」だが、ここまで触れてきたのはいわゆるカロリーベースといわれる数値。分かりやすく言うと、食料をカロリーを基準にして計算する方法で、「1人1日当たり国産供給熱量942kcal」を「1人1日当たり供給熱量2430kcal」で割った数値で、これが39%となる。
 一方で、生産額ベースという数値がある。こちらは、食料をお金に換算して計算する方法で、「食料の国内生産額9・9兆円」を「食料の国内消費仕向額14・6兆円」で割った数値で、68%となる。
 なんだ、経済価値でみれば、日本の自給率はそんなに低くないんじゃないか。そう思う人も出てくるだろう。そこで、この自給率の問題点を整理してみたいと思う。

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実は日本の食料自給率はそんなに低くない?!

 まず、カロリーベースだが、これにはさまざまな疑問点や問題点が指摘されている。

[1]家畜の飼料も自給率に考慮されるため、国産の牛、豚、卵であっても飼料が輸入比率が高ければ、牛や豚の自給率は低くなってしまう。たとえば、卵は国産比率が96%もあるが、えさは大部分が輸入なので、自給率は9%という低い数値になってしまう。

[2]食事から摂取されるカロリーの中心になるのは米や小麦など、主食の炭水化物。小麦の大部分を輸入に頼っているため、食料自給率を引き下げる要因となってしまう。

[3]算定式の分母になる供給熱量の中には、いわゆる「廃棄食料」が含まれているため、自給率が低下する。(賞味期限、消費期限の見直しがテーマ)。

 極端な話、日本人が主食を米100%に引き上げれば、それだけで自給率はドーンと上がるということになる。
 一方で、生産額ベースで見た食料自給率68%というのは、先進国と比べると決して低くない。農水省の試算によると、平成15年(2003年)の生産額ベースの各国比較は次の通り。
 オーストラリア155% アメリカ102% フランス101% オランダ96%
ドイツ 75% 日本70% イギリス40%
 これをみれば、カロリーベースで騒いでいるような危機感とは縁遠いことが分かる。何かというと、食料自給率ばかりがクローズアップされてしまうが、この数値に振り回されているだけでは、全体像を正しくとらえることはできないのである。

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就農人口を増やし、付加価値の高い生産を

 農業の再生・活性化を考える時、なんといっても必要なのは、農業をいかにして魅力ある産業にしていくか、という視点ではないだろうか。「農産物を作ることに生きがいを感じる」「農業をやることで人生が充実する」――。農業をそんな存在にすることが、さまざまな問題解決のカギを握っていると思う。ハッキリいって、これまでの農業には魅力がなかったのではないか。それは、いくつものデータが物語っている。

[1]耕作放棄地の増加 
昭和60年(1985年)までおよそ13万haで横ばいだったが、平成2(1990年)以降増加に転じ、平成17年(2005年)には38・6万haに。これは埼玉県の面積に相当する。

[2]農業就業人口の減少
昭和60年(1985年)の636万人が平成25年(2013年)には239万人に減少。約400万人(63%)もの大幅減である。

[3]農家総所得の減少
平成17年(2005年)の502万9000円が、平成23年(2011年)には463万3000円に減少。

[4]新規就農者数の減少
平成20年(2008年)の6万人が、平成24年(2012年)には5万6500人に。

 このデータを見る限り、農業は魅力のない衰退産業という印象を強くする。しかし、好転の兆しもある。土地や資金を独自に調達し、新たに農業経営を開始した経営責任者である「新規参入者」が、平成20年以降、2万人、1・9万人、1・7万人、2・1万人ときて平成24年には3万人に増えているのである。農業もやり方によっては面白い!そう思うような人々が増えてきているということなのだろう。そうした人たちを後押しするような政策がでてくるかどうか。
 「農業を取り巻く環境は確実に変わりつつあります。農協や、国の補助行政に依存してきた古いタイプの農業従事者だけでなく、自分たちで付加価値のある作物を作り、販路も開拓するといった動きが出てきている。農業生産法人も平成2年の3816から、平成21年には11064へと増えている。現場では、確実に改革が始まっているのです。問題は、これまでのような猫の目農政ではなく、将来を見据えた一貫性のある農業政策を国が打ち出せるかどうかです。」(農業問題に詳しいジャーナリスト)

 ニッポン農業のさらなる活性化のためには、この先、何が必要なのか。コンビニはどう関わっていくのか。次回は、そのあたりのテーマを考えてみたい。(つづく)

 

蓼山 陵