政策への要望――経済活性化
08/12
第12回
経済活性化策が急務
7月の参議院選挙は民主党が敗北し、参議院の議席数で野党が与党を上まわるという逆転現象になってしまいました。いわゆる「ねじれ現象」です。自民党政権時代も参議院で野党の民主党が第一党となる「ねじれ現象」だったわけで、政権は変わったのに「ねじれ現象」だけは維持されてしまった、ということになります。民主党が訴えた「政権交代」は実現したとはいえ、日本の政治は安定しないままです。そうした状況であっても、経済の活性化は、現在の日本が取り組まなくてはならない火急の課題です。
経済を活性化させる方法としては、まず、銀行が資金を融資するときの金利を調整する「金融政策」が経済学的にも効果があるとされてきました。金利を下げれば資金を借りやすくなり、その資金を使って企業は事業を拡大できます。それによって経済が活性化するのです。金利の調整の権限をもっているのが日本銀行です。
現在、日本はすでに記録的な低金利になっています。日本銀行が各銀行に貸し出すときの金利、つまり「基準割引率および基準貸付利率」(以前は「公定歩合」と呼んでいた)は、現在0.30%です。バブル経済期といわれた1980 年代に7~9%だったことを考えれば、とんでもない低金利なのです。こんなに金利を下げているわけですから、金融政策の理屈からいえば経済は活性化されていなくてはいけません。しかし現実は、残念ながら効果がでているとはいえない状況です。
なぜでしょうか。理由は「需要」がないからです。低金利にもかかわらず、資金を借りて工場を建てるとか投資をするといった企業の活動が活発になってきていません。個人においても、金利が低いから銀行に借金して家を買おうといった意欲は見られません。やはり先行きへの不安が根っこにあるのでしょう。個人は、景気がよくなるかわからない、むしろ悪くなるかもしれないと思えば、いくら低金利でも借金はしたくありません。また、企業も今やれる範囲内で余り無理しないでと中庸の策で割り切っていこうとしています。中小企業においては生産キャパシティもまだ余っていて投資どころではないのです。逆に、借りたい企業(まさにベンチャー系)もありますが、そういう企業にはなかなか銀行が貸してくれない状況です。つまり日本の経済を活性化させるために、現状の低金利政策は機能していないのです。
もうひとつ、これまで学説的にも有効だとされてきたのが「財政」でした。簡単にいえば、国や地方公共団体の支出によって行う公共事業です。主に道路や建物など形のあるものを造ることから「箱物行政」とも呼ばれてきました。戦後の自民党政権がずっと行ってきた政策で、確かに過去には雇用も創出されて日本経済は活性化されてきました。しかし、空港/空港施設をたくさん作って、結局一時的雇用(=低乗数効果)しか生まない公共投資を多々やってしまいました。この"ツケ"が財政難の原因の一つです。
その財政にしても、民主党政権になって公共事業はずいぶん減らされています。公共事業を主導してきた自民党が政権の座を失ったのは、公共事業が経済活性化の有効手段でなくなったことの現れかもしれません。民主党政権は箱物ではなく、「子ども手当」などの生活者支援を優先しています。ただし、それが波及効果を作る様な経済活性化に本当に直結するかどうか、議論のあるところです。
箱物行政には、もうひとつの問題があります。公共事業の資金は国や地方自治体が負担するわけですが、その資金源は税金であり、足りない分は国債などの借金で賄っています。民主党政権がやっている「子ども手当」の資金源も、同じく税金や借金です。その借金が今や900 兆円まで膨れあがっています。財政破綻はギリシャだけの問題ではなく、日本にとっても、ごくごく身近な問題なのです。だからこそ、民主党政権は財政支出を減らそうとしています。それは自民党政権でも考えていましたが、簡単にいかないのは民主党政権でも自民党政権でも同じです。これまで経済活性化の有効手段といわれてきた金融政策にも財政にも期待できない、それが日本の現実なのです。
規制緩和でチャレンジャーのいる国に!
それではどのようにして日本経済を活性化させればよいのでしょうか。その答えは、規制の抜本的な見直ししかない、と私は考えています。
規制を見直して、新しい創造力をもった参加者を増やすことでしか、日本の経済は活性化しないと思います。本当に必要なのか、なくてもいいのではないか、といった規制がどんな業界にもあります。古い"行法"(=規制の実型)には昭和30年代に作られたものもあると聞きました。それによって新規参入ができなくなっているのです。全く規制不要とは言いませんが、現代にマッチした規制となっているのか一つずつ検証すべきですね。そうした不要な規制を撤廃すれば、今までと違う考え方やノウハウをもった人たちが、付加価値の高いサービスや商品をつくり出すはずです。それは生活者にとって魅力的なものであり、多くの人が使うようになります。日本だけでなく、世界中の生活者が買い求めるサービスや商品も次々に産み出されるはずです。それこそが、経済の活性化の原点です。
また、新規参入者やベンチャー企業が活発に活動するためには、規制の見直しだけでは足りません。やはり、資金が必要です。しかし、これまで資金供給の役割をはたしてきている銀行は、起業家の様な新規参入者に対応できません。担保中心の貸付けという銀行の古いモノサシでは、挑戦者の可能性を測れないからです。
新規参入者や挑戦者に資金を提供する仕組み作りも再度社会として取り組む必要があります。たとえば、企業などから資金を集めて、ベンチャー企業などに投資する「ベンチャーキャピタル」を再度評価し見直すべきです。欧米では「エンジェル(天使)」といわれるベンチャー企業に投資する資産家が重要な役割をはたしています。こうしたベンチャーキャピタルを増やすには、そうした投資については大幅に減税するなどの特別処置が効果的ではないでしょうか。堀江モンや村上ファンドへの批判がブームとなって、ベンチャーや若手への支援は"過去"の産物となってしまっているのではないでしょうか。
規制見直しを進め、新規参入者やベンチャー企業の支援者を拡大する政策をとれば、新鮮なアイデアをもつ若い人たちが活躍できる社会が実現することにもなります。高齢化社会が進み、どんどん日本が保守的になっていく環境では、若者も活力を失うばかりです。国と経済界が協力して若い人達がイキイキと仕事をし、何かを作り上げられる環境をつくっていく事が重要です。高齢者を支える若者が活力を失っていては、それこそ日本に未来はありません。
今の政権に私が望むのは、根本的な規制の見直しを早く進め、金融をはじめとしてチャレンジャーを支援する仕組みを充実させることです。そうすれば、日本経済は活力をとりもどし、若者が夢をもって生きられる、高齢者も安心して暮らしていける社会が実現されるのではないでしょうか。

