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-社長コラム-「新浪です」 | 「お客さまに、より近く」この想いを胸に、ローソン社長・新浪剛史がコンビニエンス業界のあり方や、取り巻く社会の過去・現在・未来を率直に語ります。

ダボス会議で考えた
~今の世界の様子、そして今後の日本のあるべき姿とは~

短期志向の金融へ高まる批判

1月に開催された「ダボス会議(「世界経済フォーラム」の年次総会)」に、昨年に続き今年も参加してきました。

今年のダボス会議に参加してみて強烈に感じたのは、フランスのサルコジ大統領が「金融はとんでもない」と強烈に非難したのをはじめとする" Financial"つまり"金融"に対する激しいバッシングでした。昨年9月のリーマンショックなど世界的な混乱を招いた大きな要因が金融の倫理観の欠如であったにもかかわらず反省していない、というわけです。金融の倫理観の欠如によって大きな被害をこうむった"Real economy(実体経済)"の側から大きな不満が噴出した、といった感じでした。

本来金融はリアルエコノミーを助ける役割を持っているにもかかわらず、壊れたリーマンブラザーズの様な金融は、ただ自分たちの「浮利」だけを追っているのが現実だと思います。浮利といってもスゴイ額ですね。それはとんでもない事であり、ダボス会議でもそこが強く批判されていました。

最近の金融における最大の問題点は、機関投資家を中心に極端な「ショートタイムイズム」、つまり「短期志向」になっているということです。投資に対して短期間での利益還元を求める姿勢が強すぎるため、それに応えなければならないリアルエコノミーは長期的な展望と戦略をもつ余裕がなく、その結果として業績を伸ばすことができないでいます。金融が短期志向になりすぎているために、リアルエコノミーの本来の成長が阻害されているわけです。

企業の価値は「サスティナブル(Sustainable=持続可能な)」という一言で表現できる、と私は思っています。社会と共生して自らの成長を続けることを意味し、それは社会になくてはならない企業になることです。しかし短期の利益ばかりに応えようとすると、社会環境を乱してでも現時点での利益につなげなくてはならなくなります。そのいい例が米国のサブプライムローンですね。社会との共生を否定することになってしまうのです。現在の短期志向の金融がリアルエコノミーに強いているのは、まさに「社会との共生」の否定でしかありません。私たちは現在、その大きな転換点に立たされているのです。だからこそ金融も、短期志向ばかりでなくサスティナブルな「社会との共生」をもっと考える時にきていると思うのです。

中長期戦略を強調した日本

金融への批判が相次ぐなか、日本から参加した仙石由人・内閣府特命担当大臣の「中長期の成長を中長期的な考え方でやっていかなくてはならない」という発言は印象的でした。短期的な成長を優先する結果、再度リーマンショックにはなってはいけないと警鐘を鳴らされていました。

また、IMFの専務理事は、皆がこぞって輸出にドライブをかけて成長を求めている状況を痛切に批判していました。たしかに輸出を拡大すれば自国の産業は成長しますが、輸入をする国々の失業問題が目前に出てきてしまいます。すぐに輸出のみの体制が破綻してしまうことは目に見えています。各国の経済が共生していける道を考えていく必要があると考えました。それには国内での強い需要拡大を同時に行い、それに合わせた産業を育成していく政策こそが必要だと思います。その為にはそれぞれの国が規制改革を行いイノベーションを創造していくことではないでしょうか?

イノベーティブな姿勢こそが強み

今年のダボス会議には、アメリカのオバマ政権で国家経済会議委員長を務めているローレンス・ヘンリー・サマーズ氏も参加していました。彼の演説を聴いていて驚いたのは、経済学者としても有名でクリントン政権では財務長官を務めたほどの"切れ者"の彼に覇気が感じられず、ゆっくりと言葉を選ぶ話し方に「相当に悩んでいるのだな」と世界に知らしめてしまったことでした。

サマーズ氏の現在の悩みは、「アメリカにおける雇用創出」にあります。アメリカの景気は回復基調だといわれてきていますが、それでも失業率は10%近くと、依然として高い水準を維持したままです。ほんとうの意味での景気回復の実現には雇用の創出が不可欠なのですが、サマーズ氏の様子は、そのためのアイデアがオバマ政権にはないのではと疑ってしまうほど、アメリカの深刻な状況を世界に印象づけたように感じます。

一方で、中国がプレゼンス(存在感)を非常に低く抑えていたことが私には強烈な印象として残っています。昨年の会議では温家宝首相が出席してアピールしていましたが、今回は代理の人しか参加していませんでした。中国は今年も「俺たちは大きな成長をとげているんだぞ!」と強く誇示するだろう、と私は会議前に想像していました。しかし、中国の姿勢はまるで逆だったわけです。

その理由は、「あまり目立つと叩かれる」と判断したからではないでしょうか。驚いたとともに、若干のしたたかさを感じました。今は控えめにしておいた方がいいという、スマートな判断でしょうか。しかし、世界の経済を引っ張っていけるのは中国じゃないかと誰もが思っています。その為、中国の存在感が余り感じられなかったのには物足りなさを感じました。一方、インドは昨年と同様に大きな存在感を発していました。

米中の関係は日本にとっても他人事ではありません。中国に並んでアメリカへの輸出量の多い日本に対して、アメリカはプレッシャーをかけてきています。トヨタ自動車のリコール問題がアメリカで政治問題化されたのも、そうした日米関係と無関係ではありません。

共生のためのイノベーション

こうした無用な摩擦を起こさず、各国が「共生」していける社会を実現するためにも、将来性のある国内産業を育てるイノベーション(innovation=革新)、そして将来性のない産業の撤退をサポートしていくことが必要だと思います。このダイナミズムに日本は欠けており、"変換"=チェンジが苦手な国民性を"Yes we can"型にしていくのが課題でしょう。日本人は心掛け一つでYes!になれると思います。その為にフロントランナーをサポートしていけるよう、最初のリスクをとった人や企業を行政が減税等で支援する仕組み作りが肝要でしょう。そういう産業が成長すれば雇用問題も解決され、失業率も低くなるはずです。

例えばテレビ電話を通じてお客様が薬剤師に直接相談できるシステムの実験をローソンは一部の店舗で実施していますが、お金をかけてでも、高齢化社会に向けて当然やるべきイノベーションだと考えています。そういう努力を各企業が行うべきだし、それにつながる規制改革こそが日本の大きな成長戦略だと思っています。"本気"で規制改革をしなくてはいけませんね。

法人税を20%台に下げて海外の資本がもっと入って来やすくする。また、財政再建をしつつ消費税を15%以上に上げてセーフティネットをきちんとし、"安心"して働ける社会をつくる。こういった抜本的な税制の仕組みの改革を進め、世界と同じレベルに変えていかないといけないと思います。規制改革との合わせ技により日本に資本がもっと入って来るようになるでしょう。また故に経済が活性化されます。財政再建の道も明確になります。土地や株価も当然上がりますね。デフレではなくなります!夢のような話では全くありません。"Yes, let's do it !!"ですね!!