運命共同体的感覚が今の日本には必要です!
08/07
第8回
醤油を貸し借りする文化
醤油がなくなったから隣の家に借りに行く――ちょっと前までは普通の光景でした。日本の庶民文化だったといってもいいでしょう。しかし最近の都会では、そういう文化が急速に失われつつあります。特に大都市では、隣に住んでいる人がどういう人なのか知らないのが普通にもなってきているようです。そういうなかで、醤油を借りに行く文化が育つわけがありません。せちがらい世の中になったものです。
かつては隣にちょっとしたものを借りに行く庶民文化がありました。もともとが農耕民族である日本人は、隣の人と運命共同体的な感覚をもてるDNAをもっているからです。それが戦後、アメリカ的な文化が急速に広がるなかで、運命共同体的感覚をどこかに置き忘れてきてしまったのかもしれません。
他の文化を取り入れるのは悪いことではないのですが、それには自分たちの良い部分を残しながら他文化の良いところを吸収していく姿勢が大事です。ところが最近の日本は、日本ならではの庶民文化を必要以上に否定し、グローバリズムと称してアメリカイズムの個人主義的な文化を必要以上に受け入れてしまったような気がします。その結果、隣と助け合う文化を失い、自らが生き抜くのが精一杯で他人とどう対応したらよいか考える余裕がなくなってしまったのです。"せちがらい""心が安心できない"日本になってしまったのです。
せちがらくしてしまった個人主義
こうした"せちがらさ"を無くしていくことが、これからの日本を良くしていくために必要不可欠なことです。"自分さえ良ければいい"という個人主義ではなくいざとなれば助けてくれる社会、つまり運命共同体的な感覚が今の日本には求められていると思います。
というのも、今の日本を変えられるのは20代~40代の世代ではありません。60代以上の世代こそが、日本を変えるカギを握っています。格差が広がるなかで、若い世代は比較するとおカネがないし、生活していくために汲々としている状態です。一方で60代後半以上の世代は、子供も育ちローンも終わり経済的にもゆとりがあるし、有権者としても大きな力をもっています。
その力を自分たちのためにしか使っていません。年金とか医療などで自分たちの世代さえ良ければいい、という姿勢なのではないでしょうか。自分たちの年金や医療制度を守るために、どんどん国に支出させようとしています。しかし、このまま60代以上の人たちだけが暮らしやすい環境を追求していけば、日本の国庫は破綻してしまいます。60代以上の世代が「自分たちだけが良ければいい」と思い、行動することで、日本を危険な状況に追い込んでいます。実は若い世代こそが高齢化社会の経済を支えていなければならないのです。
今の日本に必要なことは、60代以上の世代が、日本が良くなることをバックアップする集団になることです。「ニートだからダメだ、フリーターだからダメだ」と若い世代を批判するだけでなく、積極的にバックアップしていくことです。つまり、若い世代と運命共同体だという感覚をもっていただかなくてはいけない。日本本来の庶民文化を取り戻してもらいたいのです。
庶民文化復活が日本復活のカギ
日本は良いものをたくさんもっています。発展の可能性のある技術、知的レベルの高い人材等、世界的に良いものをたくさんもっているんです。それらを国としての成長につなげていくためには、それを生かす環境を整えていく必要があります。簡単に言えば、チャレンジできる仕組みです。
アメリカには失敗しても再起できる社会的な仕組みがあります。だから、チャレンジする人たちがたくさんいるわけです。しかし日本では、1回失敗すると周りにも信用されなくなるなど、再チャレンジできる体制になっていません。そのためにチャレンジする人が少なく、せっかくのやる気のある人材がなかなか活躍できません。
イノベーションを起こすには、チャレンジできる仕組みが不可欠です。具体的には、失敗してもその失敗を糧に再チャレンジし大きく活躍する社会が必要です。失敗しても、"よくやったなあ""次のチャレンジを期待しているよ"と励まされればたくさんのチャレンジャーが現れるはずです。それが、日本の成長につながっていきます。戦後の日本は、アメリカの個人主義は学んだものの、チャレンジするための仕組みづくりは学んでこなかった。今こそ、それを学ぶべきときでもあるのです。
一方でそういうチャレンジする人達を皆でサポートしようとする。また、うまくいった人も共同体でバックアップする。そうした体制を整えていくためには、やはり資金が必要です。しかし、年金や医療といった60代以上の世代のためだけにおカネを使っていたのでは、その資金が捻出できません。だからこそ、政治的に強い60代以上世代のほうから積極的に声をあげてもらう必要があるのです。
たとえば、ある一定額の資産を持っている人は年金を受け取るのをやめて、若い人に「安心しろ!年金はもらえるから頑張れ!」と言えば、急速に日本は変わっていくはずです。
また、65才以上の人達が全日本の個人資産1,500兆円の内70%も保有しています。中には生活するのにも大変厳しい人もいらっしゃいます。しかし、20代の人達に比べて圧倒的に資産を保有しています。そこでその資産(特に現金)をもっと20代~40代に移行できないか?贈与税を思い切って年間1,000万円までは"0"とかにしてしまってはどうでしょうか?
一番おかねがかかる20代~40代にお金がないために貧して鈍してしまっているのではないかと思います。心の余裕とか豊かさを失っているのではと心配しています。グローバリズムは避けられません。しかし、自らのアイデンティティ(文化)はきちんと守り、互助的ゆえに"お前ちゃんとやれ!!"というプレッシャーの中でやっていくのが日本にはあっているのではと思います。
こうした庶民文化的心の豊かさが薄れてしまったことが、日本を停滞させている大きな原因の一つなのです。それを取り戻すこと、特に豊かな世代が庶民文化を発揮することが、これからの日本を良くしていくためには絶対に必要なことだと考えています。

