日本を元気に! ~日本の景気回復策~
04/30
第6回
エコ・オリンピックで将来に夢を
日本経済が元気になるために本当に必要なもの、それは、気持ちを明るくする「夢」をもてるようにすることです。それをやるのが政治の役目だし、国のリーダーの役割です。麻生太郎首相が主催する有識者会議「安心社会実現会議」の初会合が4月13日に開かれましたが、その席で私は、「夢を語ってください」と訴えてきました。
深刻な不景気に対応するため、4月10日、政府は15兆円という過去最大規模の経済対策を打ち出しましたが、いくらおカネを注ぎ込んでも、国民の一人ひとりが「おカネを使いたい」という気持ちをもてるようにしなければ、おカネはまわりません。せっかくの定額給付金にしても、あるアンケート調査では50%近い人が「貯蓄する」と答えていました。おカネは循環しないと経済の活性化につながっていかないわけで、いくら政府が過去最大の経済対策を講じても、それが貯蓄にまわっていくようでは活性化につながっていきません。
おカネを循環させて経済を活性化させるためにリーダーがやらなければならないことは、おカネを注ぎ込むことも必要ですが、まずは将来に向けての「夢」を語ることだと思います。景気が悪化しているとか雇用が激減しているといった悪いことばかりではなく、国民が将来に希望をもてるような「夢」を提示することが、いちばん重要なんです。
たとえば、2016年のオリンピックを招致しようと東京都ががんばっていますが、その開催理念として「エコと平和」を掲げています。それならオリンピックに向けて、ソーラーパネルや風力といった代替エネルギーだけで運用する世界で初めての施設を目指すなど、世界のどこもやったことのない「夢」のあるオリンピックの実現を政府が率先して盛り上げ、国を挙げて取り組んでいくことだって考えられます。そんなオリンピックを実現するためにさまざまな技術が生まれていくだろうし、その技術力だけでも日本経済の活性化につながるはずです。
なにより、どこの国もやったことのないような「夢」のあるエコ・オリンピックを目指すことで、日本の国民は日本の将来に期待できるようになります。そうすると段々と皆の気持ちがワクワクしてくるにちがいない。これが重要で、ワクワクするような、高揚した気持ちこそが消費の原点なんです。国民がこぞって消費に向かえば、経済の活性化は一気にすすみます。そうした国民がワクワクできる「夢」を、わかりづらい内容や表現ではなく、「私はこういう国にしたい」といった単純明快な形でリーダーに語ってもらいたいと思います。
消費拡大のためにも子育て環境の整備を
消費を盛り上げて経済活性化につなげていくために、ぜひ必要なことが、子育てのできる環境づくりです。子どものいる家庭や社会は文句なく楽しいし、それこそワクワクできます。確かに生活苦の方々もおられると思いますが、子供は笑いを提供してくれます。
しかし現状は、なかなか女性が子どもを安心して産める環境になっていません。子どもを産んだ女性は子育てのために、仕事をやめて家庭にはいらなければならないケースが多いようです。女性の力を経済活動のなかで生かすことができてないわけで、経済活性化の面からは大きなマイナスでしかありません。仕事を優先しようとすれば、子どもを産まないという道を選択するしかないということが起こってしまう。それでは"ワクワク"感が薄れ、消費という面ではマイナスになってしまいます。
そうした二つのマイナスを無くすためには、会社や社会が協力して子育てのできる環境をつくりあげることが重要です。そのために会社は、お母さんたちが働きやすい環境を積極的に提供していくべきです。例えば子どもたちが幼稚園や学校から帰ってくる時間には家にいられるように、フルタイムではなく半日の勤務でも大丈夫な給与体系を整えるなど、方法はいくらでもあります。ローソンは在宅勤務制を導入しますが、それによって、お母さんになっても子育てと仕事が両立できるわけです。そういうことを多くの会社がやるようになれば、子どもの数が増えてワクワク感のある社会になり、それによって消費も拡大していきます。そのためには、会社の子育て支援制度導入には税制面で優遇するなど国としてやるべきこともたくさんあります。
社会的インフラでいえば、保育所の整備が叫ばれていて、認可保育所の待機児童は約2万人といわれています。現在の多くの幼稚園も働くお母さんを支援する体制になっているとはいえません。早い時間に園児を帰してしまう現在の体制では、お母さんが会社勤めするには難しく、お母さんは仕事をあきらめざるをえない。また、朝早くから夜まで児童を預かる幼稚園は公立に多いのですが、常に数が足りず待機児童がすごく多いのが現状です。その問題を解決するには保育園や幼稚園の数を増やしたり、保育士の数を増やしたり待遇の改善をはかるなど、根本的なところから見直していく必要があります。そうした改革には制度的なものもからんでくるので、まずは国や地方自治体が率先してもっと徹底して取り組む必要があるわけです。
所得移転で消費拡大を
消費でも子育てでも、中心になるべき年代層は20~40代です。しかし家のローンを抱えていたり、現在のように景気が厳しいなかでは、この年代層が消費に向かえないし、積極的に子どももつくれない、ということになってしまっています。
こうした状況を打ち破るためには、高齢者から20~40代への「所得移転」を考えるべきだと思います。具体的には、贈与税の見直しです。現在、贈与税がかからないのは、1年間にもらった財産の合計が110万円以下の場合です。この額を500万円に増やすだけでも、高齢の親から20~40代の子への所得移転が、かなり進むはずです。今回の景気対策では住宅関連のみを500万円プラスにしていますが、使い途を制限しないで枠を増やさないと、ほんとうの消費拡大にはつながりません。
というのも、貯蓄などの個人金融資産残高は現在、1500兆円あるといわれていますが、その6~7割を65歳以上の高齢者が所有しているからです。過去最大という今年の国の予算(一般会計)でも88兆円ですから、その17倍もの個人金融資産残高があるわけです。にもかかわらず、その大半を高齢者が握っていることで、循環していない。眠らせてしまっているわけです。高齢者が子育てなど消費の需要が多い若い層、つまり自分の子に譲渡しやすくして世の中で循環するようになれば、確実に経済は活性化します。それには、贈与税のかからない額を引き上げて、高齢者から若い層への所得移転が起きやすい環境をつくる必要があるわけです。
所得移転が行われて若い層に余裕が生まれれば、「子どもを産もうかな」という気持ちにもなるでしょう。高齢者にしてみれば孫ができることで楽しみができるし、世の中に子どもが増えれば明るい社会のなかで暮らすことになります。楽しいから生きたいと思うし、病気にもならない。そうした世の中にすることが、最高の高齢者対策でもあるわけです。
子育てができる環境づくりも、所得移転をしやすくすることも、根本にあるのは「社会を明るくするため」です。社会を明るくすることが消費を拡大することになり、経済を活性化することにつながるからです。現在のような未曾有の大不況から脱出するためには消費者におカネを使ってもらうしかないわけですが、おカネを使うかどうかは心理的な要素が大きくかかわっています。だからこそ、「夢」があってワクワク感のある、明るい社会にして、消費者に「使おう」という気持ちになってもらうことこそが、最高の経済対策でもあるわけです。景気回復策を、そうした根本のところに立ち返って考えてみる必要があると思っています。

