企業情報

-社長コラム-「新浪です」 | 「お客さまに、より近く」この想いを胸に、ローソン社長・新浪剛史がコンビニエンス業界のあり方や、取り巻く社会の過去・現在・未来を率直に語ります。

ダボス会議に出席してきました!

経済と政治における"世界のリーダー"が集うダボス会議

世界経済フォーラム(ダボス会議)の様子

「世界経済フォーラム」、通称「ダボス会議」に参加してきました。この会議は年に1回、スイスの地方都市・ダボスで開催されています。世界の経営者が一堂に会して、現在グローバルレベルで抱えている問題を議論し、危機感を共有し、解決の糸口を探っていくというのが狙いです。隣にはコカ・コーラの会長がいて、その隣にはペプシの会長、その隣にはネスレの会長……誰もが耳にしたことのある企業の社長・会長が集うフォーラムだけに、そうそうたる顔ぶれでした。

このダボス会議はどの人・企業でも行けるというものではありません。インビテーション、つまり招待があって、初めて参加できます。そうした中、事務局がローソンのイノベーションなどを評価し、ローソンを参加者としてふさわしいと選んでくれたことは非常に光栄なことでした。

ダボス会議では経済やビジネスの問題だけでなく政治も大いに絡むので、有数の経済人やノーベル賞受賞の経済学者などだけでなく、プーチン氏(ロシア)やブラウン氏(イギリス)、メルケル氏(ドイツ)などの現職の首相・大統領をはじめとする、トップクラスの政治家もたくさん出席します。日本からも麻生総理が出席し、我が国がどういうことに貢献しているかなどのスピーチをしました。具体論があり、とてもよい演説でしたよ。アメリカからは、現職の大統領は来ませんが、それに近い人たちが出席します。今回は元大統領のクリントン氏が来ていました。

そうしたラインアップでありながら、スキー場くらいでしか名を馳せていないほどの小さなまちでの会議なので、ゲレンデがあるような山奥のごく普通のホテルが会場だったのは意外でした。つまり、世界のリーダーたちが、議論をするためだけに来ているのです。そうした狭い会場で、目の前でリーダーたちのオーラをひしひしと感じられたのは、とてもよい刺激になりました。

会議で見えてきた"保護主義からの脱却"と"途上国のバックアップ法"

2009年3月9日放送
NHK BS特集
「世界は危機にどう立ち向かうか」より
(提供:NHK)

また、ダボス会議では世界の現在の動きを感じられました。世界の動きは、第二の経済大国・日本にとって非常に重要なことです。それを先読みするのにはとてもよいフォーラムでした。

ダボス会議では、貿易の保護主義に警鐘を鳴らしています。世界が保護主義に向かっていくと、世界経済はたいへん厳しい状況になってきます。モノ作りで成り立ってきた国・日本にとっては、とりわけマイナスです。せっかくものづくりに強い国なのに、つくったものを輸出できなくなりますから。いま、アメリカは銀行を救済するかわりに「バイアメリカン」条項、つまり「アメリカ国内の公共事業には、アメリカで作られたものを使え」という保護主義の動きを見せています。オバマ大統領のリーダーシップで是非ともこれは止めてもらいたいものですね。一方保護主義を抑制する為には例えば日本や中国にも「もっとアメリカのものを買え」という圧力がかかってきます。国内消費はGDP(国内総生産)の約6割を占めていますので、この「買う」は政府よりも国民に課されることになります。となると、どうしても日本は内需の拡大が必要で、いろいろな規制を緩和し、新しい産業をつくる等、政策的にいろいろやっていかなければなりません。ほかの国の物をまったく買わずして「ウチの国のものを買ってください」と言うのは虫が良すぎますよね。つまり、それだけ日本もグローバル社会の中で生きてきているわけです。いまや日本は国内だけでは経済が立ち回りません。そういう中で日本は何をすべきか、また企業活動にどういった影響があるか。そういうことを考えさせられかつ将来を読む材料を与えてもらえる会議でした。

一方で"社会起業家"の会議に出席して、企業が発展途上国に進出する際は、自分の商品を売るだけではなく買っていただく国々に理解されるように努めること、すなわち経済の合理性ばかり考えるのではなくその国への貢献が重要だと考えさせられました。社会起業家を教育しバックアップするのもいいのではないかと。例えばノーベル平和賞を受賞した、社会起業家として有名なバングラデシュのユヌス氏。「グラミン銀行プロジェクト」――貧困層にのみ無担保で貸し付けを行うマイクロクレジット事業――のことを聞いて「なるほど」と思いました。これまではただ自分の商品を売っていくだけだったところを、困っている人たちの為にインフラを整え、井戸を掘り、水をつくりながら、そこでどのように自分の商品を売っていくかに絡めていく。グローバル企業にこの様な貢献がないと発展していく途上国にこれから入っていくのは難しいでしょう。これまではODA(政府開発援助)で国が行うことが多かったですが、そういうものに企業も参画していくと国との距離感がもっと小さくなるのではないでしょうか。

ローソンが出店している中国でも、中国の人達の生活向上を応援すべく何かしらの企画をやってみたい気がしますね。また、それをやらずにして中国で本気でモノ売りをやっていくのは仲々、逆に難しいのではと思います。

これまでファンド等で大金持ちになったたくさんの欧米人、いわゆる資本主義の権化のような人たちが、社会の役に立つためにNPO(民間非営利団体)・NGO(非政府組織)を始める動きが高まっています。

おもしろい構図ですよね。180°の転換なんですから。「お金を運用して儲ける」ということから「もっと地球規模で世の中をよくしなくてはならないのでは?」と疑問を持ち始めたんでしょうね。世界ではこういう気運が高まっているのですが、正直言って、日本にいるとなかなか気づかない部分でもありました。それがダボス会議を通じて見えてきたことは、私にとって大変プラスになりました。

逆に「改善すべきでは」と思った点もありました。それは、アジアのプレゼンスが弱いところです。今回のような全世界的な経済危機の中であっても、まだまだ主導権を握っている(握っていきたいと思っている)のは欧米です。これからはその中にもっとアジアが入っていき、大きな枠組みの中で「欧・米・亜」の三極でやっていくことが、世界には必要となると思います。そして、その「亜」の中心は日本と中国になっていくでしょう。その日本の企業の中から招待された者として、この機会にローソン、日本の最も進化しているコンビニエンスシステムとしての「ブランド」として認められていくよう頑張らなければ、と、気を新たに引き締めている次第です。

もちろん気を引き締めるだけでなく、ダボス会議のテーブルでの議論でローソンの考えをしっかり述べてきました。「単純に儲ければよいという世の中から社会との共生が重要だ。だから弊社の企業理念を数年前に『私たちは"みんなと暮らすマチ"を幸せにします。』に変え、その浸透を進めています。新しい資本主義のあり方は、社会との共生がしっかりと出来る企業を目指すところにあるのでは?」という発言をしました。発言に「あなたの企業理念こそ、世界が求めていかなければならない代表的な社是ですね」という各国の方々からの賞賛を得て、少なからずの手ごたえも感じさせてくれました。

今回は初めてのダボス会議参加でしたが、これからも出席していく機会があれば、列席のトップ同士ともだんだん通じ合って「一緒に何かやっていこうよ」と、保護主義を超える、世界に求められる企業の一端になれるかもしれません。

そのためにも、ローソンのトップとして、また世界に冠たるコンビニエンスシステムの最先端企業を自負できるべく、そして企業理念の実現による企業価値向上に、更に精進し努力していきたいと思いました。