新浪ブログ

「お客様さまに、より近く」この想いを胸に、 ローソン社長・新浪剛史がコンビニエンス業界のあり方や、取り巻く社会の過去・現在・未来を率直に語ります。

    2009

    魅力ある国、日本へ!

    2009年9月18日

    なぜ政権交代が起きたのか

    ph_20090918_01.jpgついに「政権交代」が実現し、民主党政権が誕生しました。これまで自民党がやってきたことは、超大企業を支援することで輸出入を活発にし、それに よって日本経済を浮揚させるというものでした。自民党と経団連(日本経済団体連合会)が一緒になって日本の経済力をつくりあげるという体制が、この何十年 か続いてきました。それによって日本は敗戦からの復興を果たし、経済大国に成長したわけですから、その体制は国民にも富をもたらし大成功だったといってい いと思います。

    しかし、そうした自民党がつくってきた体制に日本国民がついていけなくなりました。その結果が、民主党が大勝した8月30日の衆議院選挙だっ たわけです。なぜ国民がついていけなくなったのかといえば、グローバリズムを進めてきた自民党体制の綻びが顕著になってきたからにほかなりません。たとえ ば大企業は、"当然ながら"グローバリズムの競争に打ち勝つ為に人件費の安い中国などに生産拠点を移転させてきました。また国内人件費を抑え労働生産性を 上げ、グローバル競争を戦ってきました。つまり、いわゆるコンセプト的に言えば「安い賃金」を、中国を中心とする国から輸入してしまったのです。

    そのために、日本国民にとってグローバリズムが持ち込んだ「生活苦」が大きな問題になってきました。雇用は増えず、上がらない賃金で生活を守 るためには、これまで以上に働かなくてはならなくなり、忙しくて自分自身のことを考えるだけで精一杯という状況になってしまったのです。他人のことも考え て互いに助け合うという農耕民族として日本人が培ってきた「美点」は急速に失われ、精神的にもギクシャクした、どうにも暮らしにくい社会になってしまいま した。そうした状況に日本人は疑問を持ち、ついていけなくなった。そして自民党に「NO」をつきつけ、民主党を選択したのではないでしょうか?しかし、日 本だけでこのグローバリズムを止めることはできません。むしろ日本は自由貿易体制の中、最もそれを享受した国です。

    民主党政権に望むこと

    政権交代が実現したわけですが、振り子が右から左へと極端に振れすぎないか私は若干心配しています。現状を変えようとすれば、必ず亀裂が起きます。 その亀裂が大きいと、極端な方向に動きかねません。これまでの「自由主義」を変えようとしている亀裂が大きくなりすぎると、結果の平等となるような「社会 主義」に流れかねないのではと。

    日本にとって非常に大切なことは、あくまで自由主義のなかでの「機会の平等」を目指す姿勢を再構築することです。それを忘れて社会主義的な方 向に極端に突き進んでしまえば、競争による創意工夫を行い、いいモノを作っていくといった、これまで培ってきた良い部分までも破壊しかねません。そうなら ないために、民主党政権になっても日本が大切にしなければならないのは自由主義のなかでの機会の平等を目指す姿勢です。それには確かに小泉さんは策を打た なかったと思います。しかし小泉さんの後任は規制緩和を続けながらも"ゆがみ"を治していくのが役割だったのではないでしょうか。英国のサッチャーさん以 降のブレアさんのような"教育"への施策は必要であったと思います。"教育"こそが機会の均等の最重要な施策ではないでしょうか?

    環境対応技術で日本の国際的地位向上を

    自由主義といっても、「自由気ままにやっていい」ということではありません。日本における今回の政権交代は、ファンド資本主義に代表される「金儲け 至上主義」への批判という世界的な潮流ともつながっています。(残念ながら国際的に金融業は反省をしていません!)自由気ままに金儲けだけやっていればい いという姿勢ではなく、自由主義にあっても「自らを律する」ことが必要だということです。

    「自らを律する」ことで、いちばん考えなければいけないのが地球環境です。金儲けのために化石燃料を勝手気ままに消費して二酸化炭素 (CO2)をまきちらす姿勢は、もはや許されなくなってきています。金儲けに挺進するのではなく、この泣いている地球を、自然豊かな地球として次の世代に きちんと引き継ぐことのほうが重要なわけです。それに、民主党は強い意志をもって取り組もうとしています。

    民主党政権発足を目前にした9月7日に開かれた朝日新聞社主催の「朝日地球環境フォーラム2009」でオープニングスピーチを行った民主党の 鳩山由紀夫代表は、「2020年までに日本のCO2排出量を25%削減する」と述べ、マスコミに大きくとりあげられました。もともと「25%削減」はマニ フェストに盛り込まれていたものですが、民主党政権実現が確実になってから、鳩山代表が直接、口にしたことで改めて注目されたわけです。国際公約にもする 様子です。

    しかし私は、この「25%削減」を外交面で変に利用されないよう、気をつけるべきだと思いますが、詳細なプランが大切です。鳩山氏は「すべて の主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我国の約束の前提」とも述べています。米国や中国、インドも含めた国際合意を前提とし、日本だけが突出した削 減目標を負わない戦略だと思います。そうでないと日本だけが重い削減目標を抱えて産業の国際競争力を失うことになりかねないからです。また、その実現の為 の基本的"ビジョン"を早く出して、経済産業省のある程度の合意も必要でしょう。「25%削減」という目標に向かって技術的なリーダーシップをとっていく 努力を続けるなかで、必ず技術のブレイクスルーが起きてきます。これまでもLEDや電気自動車など環境対応の技術革新をやってきているので、高い目標を掲 げることで、さらなるブレイクスルーを起こすことができるはずと信じています。そのためには、そういう努力をする企業に対して、民主党政権は減税や補助金 などあらゆるバックアップをしなければいけません。

    そうした技術をもつことが国家戦略において強力な力になってきます。現在の戦争は、石油など化石燃料の取り合いが大きな原因の一つになってい ます。その化石燃料に頼らない技術を提供することで、日本は世界の平和に貢献できる国になれるのです。軍隊をもたなくても、環境に優しい、圧倒的に強い技 術をもつことで、日本は世界のなかでも魅力のある国になっていけるわけです。そうした技術の輸出は、日本企業の利益にもつながり、国が富むことにもつな がっていきます。そうした日本を目指すために、「25%削減」をどのように達成していくのか、具体的な中長期プランを民主党政権に早々に示してもらうこと を期待しています。

    日本にとって実質的、初めての政策変化。まずは恐がらずに大いに楽しみましょう!!どちらにいってもまずは苦しい道です。それを乗り越えるには、楽観的・前向きな姿勢が大切ですよ!!

    運命共同体的感覚が今の日本には必要です!

    2009年8月 7日

    醤油を貸し借りする文化

    醤油を貸し借りする文化醤油がなくなったから隣の家に借りに行く――ちょっと前までは普通の光景でした。日本の庶民文化だったといってもいいでしょう。しかし最近の都会で は、そういう文化が急速に失われつつあります。特に大都市では、隣に住んでいる人がどういう人なのか知らないのが普通にもなってきているようです。そうい うなかで、醤油を借りに行く文化が育つわけがありません。せちがらい世の中になったものです。

    かつては隣にちょっとしたものを借りに行く庶民文化がありました。もともとが農耕民族である日本人は、隣の人と運命共同体的な感覚をもてる DNAをもっているからです。それが戦後、アメリカ的な文化が急速に広がるなかで、運命共同体的感覚をどこかに置き忘れてきてしまったのかもしれません。

    他の文化を取り入れるのは悪いことではないのですが、それには自分たちの良い部分を残しながら他文化の良いところを吸収していく姿勢が大事で す。ところが最近の日本は、日本ならではの庶民文化を必要以上に否定し、グローバリズムと称してアメリカイズムの個人主義的な文化を必要以上に受け入れて しまったような気がします。その結果、隣と助け合う文化を失い、自らが生き抜くのが精一杯で他人とどう対応したらよいか考える余裕がなくなってしまったの です。"せちがらい""心が安心できない"日本になってしまったのです。

    せちがらくしてしまった個人主義

    こうした"せちがらさ"を無くしていくことが、これからの日本を良くしていくために必要不可欠なことです。"自分さえ良ければいい"という個人主義ではなくいざとなれば助けてくれる社会、つまり運命共同体的な感覚が今の日本には求められていると思います。

    というのも、今の日本を変えられるのは20代~40代の世代ではありません。60代以上の世代こそが、日本を変えるカギを握っています。格差 が広がるなかで、若い世代は比較するとおカネがないし、生活していくために汲々としている状態です。一方で60代後半以上の世代は、子供も育ちローンも終 わり経済的にもゆとりがあるし、有権者としても大きな力をもっています。

    その力を自分たちのためにしか使っていません。年金とか医療などで自分たちの世代さえ良ければいい、という姿勢なのではないでしょうか。自分 たちの年金や医療制度を守るために、どんどん国に支出させようとしています。しかし、このまま60代以上の人たちだけが暮らしやすい環境を追求していけ ば、日本の国庫は破綻してしまいます。60代以上の世代が「自分たちだけが良ければいい」と思い、行動することで、日本を危険な状況に追い込んでいます。 実は若い世代こそが高齢化社会の経済を支えていなければならないのです。

    今の日本に必要なことは、60代以上の世代が、日本が良くなることをバックアップする集団になることです。「ニートだからダメだ、フリーター だからダメだ」と若い世代を批判するだけでなく、積極的にバックアップしていくことです。つまり、若い世代と運命共同体だという感覚をもっていただかなく てはいけない。日本本来の庶民文化を取り戻してもらいたいのです。

    庶民文化復活が日本復活のカギ

    日本は良いものをたくさんもっています。発展の可能性のある技術、知的レベルの高い人材等、世界的に良いものをたくさんもっているんです。それらを 国としての成長につなげていくためには、それを生かす環境を整えていく必要があります。簡単に言えば、チャレンジできる仕組みです。

    アメリカには失敗しても再起できる社会的な仕組みがあります。だから、チャレンジする人たちがたくさんいるわけです。しかし日本では、1回失 敗すると周りにも信用されなくなるなど、再チャレンジできる体制になっていません。そのためにチャレンジする人が少なく、せっかくのやる気のある人材がな かなか活躍できません。

    イノベーションを起こすには、チャレンジできる仕組みが不可欠です。具体的には、失敗してもその失敗を糧に再チャレンジし大きく活躍する社会 が必要です。失敗しても、"よくやったなあ""次のチャレンジを期待しているよ"と励まされればたくさんのチャレンジャーが現れるはずです。それが、日本 の成長につながっていきます。戦後の日本は、アメリカの個人主義は学んだものの、チャレンジするための仕組みづくりは学んでこなかった。今こそ、それを学 ぶべきときでもあるのです。

    一方でそういうチャレンジする人達を皆でサポートしようとする。また、うまくいった人も共同体でバックアップする。そうした体制を整えていく ためには、やはり資金が必要です。しかし、年金や医療といった60代以上の世代のためだけにおカネを使っていたのでは、その資金が捻出できません。だから こそ、政治的に強い60代以上世代のほうから積極的に声をあげてもらう必要があるのです。

    たとえば、ある一定額の資産を持っている人は年金を受け取るのをやめて、若い人に「安心しろ!年金はもらえるから頑張れ!」と言えば、急速に日本は変わっていくはずです。

    また、65才以上の人達が全日本の個人資産1,500兆円の内70%も保有しています。中には生活するのにも大変厳しい人もいらっしゃいま す。しかし、20代の人達に比べて圧倒的に資産を保有しています。そこでその資産(特に現金)をもっと20代~40代に移行できないか?贈与税を思い切っ て年間1,000万円までは"0"とかにしてしまってはどうでしょうか?

    一番おかねがかかる20代~40代にお金がないために貧して鈍してしまっているのではないかと思います。心の余裕とか豊かさを失っているので はと心配しています。グローバリズムは避けられません。しかし、自らのアイデンティティ(文化)はきちんと守り、互助的ゆえに"お前ちゃんとやれ!!"と いうプレッシャーの中でやっていくのが日本にはあっているのではと思います。

    こうした庶民文化的心の豊かさが薄れてしまったことが、日本を停滞させている大きな原因の一つなのです。それを取り戻すこと、特に豊かな世代が庶民文化を発揮することが、これからの日本を良くしていくためには絶対に必要なことだと考えています。

    これからあるべき資本主義

    2009年6月12日

    問われている資本主義

    いま、資本主義の「あり方」そのものが問われています。つい最近までの資本主義は「勝者」と「敗者」が明確に分かれ、その格差をどんどんひろげてい く資本主義でした。その結果として、昨年9月、アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻という大事件が起きました。いわゆる「リーマン・ショッ ク」です。それによって、世界中が不況の波に呑み込まれてしまいました。

    そのリーマン・ショック以前から、資本主義のあり方に疑問を感じている人たちはいました。私も、その1人です。一攫千金で一部の人たちだけが裕福になり、その他の大勢の人たちは生活にも困るような資本主義に馴染めないというか、違和感がありました。

    もっとも、一攫千金がアメリカの歴史において重要な役割をはたしてきたことも否定するわけにはいきません。カリフォルニアで金を掘り当てると いった一攫千金を夢みて行動するエネルギーが、アメリカを今日のような大国に押し上げてきたことは事実です。アメリカン・ドリームが、アメリカ人のDNA に組み込まれているのは確かなことなのです。そうしたアメリカ的な資本主義が世界を席巻し、行き過ぎた結果がリーマン・ショックとして現れたことになりま す。

    しかし、行き過ぎを、どこで止めるか、これは難しい問題です。誰もが同じ方向を目指して突っ走っているなかで、なかなか「ストップ」とはいえ なかった。ただ、リーマン・ショックを経験した現在、これまでを反省する姿勢は必要です。金儲けを「悪」と頭から決めつける日本的な風潮は行き過ぎとして も、「金儲けだけが評価される」という考え方は変えていかなければいけません。資本主義の「あり方」を問い直し、あるべき姿を追求していかなければならな い、ということです。

    共生を実現する経営が求められている

    今回のリーマン・ショックで改めて思い知らされたのは、「自分だけが儲ければいいのではなく、社会全体が豊かにならなければダメだ」ということでは ないでしょうか。企業で言えば、ただ利益を追求するのでなく、社会との「共生」を重視しなければならない、ということでしょう。それこそが、これからある べき資本主義の姿のキーワードになるとおもいます。

    もともと日本人は、歴史的にいって農耕的なDNAを強くもっています。「自分だけよければいい」という発想では成り立たないのが農耕社会で す。田に水を引くためには用水路が必要ですが、それは1人の力ではつくれない。みんなが協力しあってこそ用水路を完成させることができます。助け合って何 かをやっていこうとする「共生」の考え方が根本になければ、社会そのものが成り立たない。

    しかし、その共生の考え方が、なかなか経営の場面でも発揮できていなかった。短期的な利益を重視するアメリカ型の資本主義こそが「グローバ ル・スタンダード」だ、とされていたからです。ほんとうは「アメリカン・スタンダード」でしかなかったのですが、〝世界共通のルール〟であるかのように錯 覚させられていました。日本だけでなく、それは世界各国、共通の錯覚だったといえます。

    そのアメリカン・スタンダードの資本主義が崩壊した現在、求められているのは共生を大事にする資本主義だと、私は考えています。まだ、多くの 人たちが、資本主義のあり方について迷っているところです。リーマン・ショックによる不況のダメージがあまりに深く、変化に対して、怯えてもいます。で も、変わらなければいけない。いまは、古い資本主義から新しい資本主義に変わろうとしている、まさに「過渡期」だといえます。

    日本的の押しつけではなく、グローバルな昇華

    角川学芸出版発行 角川ソフィア文庫 「論語と算盤」 渋沢栄一著日本が歴史的に共生のDNAをもっているからといって、これからあるべき資本主義が「日本的なもの」ということではありません。欧米的なマネジメン トがダメになると、すぐに「日本的なマネジメントに戻れ」と叫びはじめる人がいます。能力主義の欠陥が目立つようになると、日本的な終身雇用に戻るべき だ、といった論調になるわけです。

    しかし、それでは何も変わりません。ただ、過去を繰り返すだけのことで、そこに進歩はありません。必要なことは、少しずつでも進歩していくこ とです。それには、欧米的にこだわるのではなく、日本的にこだわるのでもない、その両方を発展させていって、これからあるべき資本主義に昇華させていかな ければいけません。

    かつて明治維新で日本が大きく変わっていく時代に、「和魂洋才」という言葉がさかんに使われました。日本人としての精神を大事にしながら西洋 の優れた学問を受け入れる、という意味ですが、それを見事にやってきたからこそ、その後の日本の発展があったわけです。和洋のいいところを取り入れて「文 明開化」に昇華させたからこそ、「世界に誇れる日本」になれたわけです。(しかし、その後天狗になりすぎて大失敗したのですが…)

    それと同じことが、いま求められています。しかも、これからあるべき資本主義は、日本にとってだけの資本主義ではありません。日本をふくめた、世界中の国にとって必要な資本主義のあり方だと思います。

    「日本資本主義の父」といわれる渋沢栄一は、「論語と算盤は一致すべし」と主張していました。経営には論語が諭しているような倫理観が重要だ、というわけです。まさに、社会と企業の共生です。

    倫理観には、それぞれの国の歴史、文化、哲学といったものが反映されます。国によって、いろいろな考え方があり、倫理観があるわけです。だか ら、それぞれの国で、それぞれの「和魂洋才」が必要になってくる。それをやりつつ、自分の殻にこもるのではなく、これからあるべき資本主義を模索して互い に議論していくべきです。そういう議論ができてこそ、ほんとうの意味のグローバリゼーションだし、グローバルに通用する資本主義ができあがるはずです。

    日本を元気に! ~日本の景気回復策~

    2009年4月30日

    エコ・オリンピックで将来に夢を

    エコ・オリンピックで将来に夢を日本経済が元気になるために本当に必要なもの、それは、気持ちを明るくする「夢」をもてるようにすることです。それをやるのが政治の役目だし、国の リーダーの役割です。麻生太郎首相が主催する有識者会議「安心社会実現会議」の初会合が4月13日に開かれましたが、その席で私は、「夢を語ってくださ い」と訴えてきました。

    深刻な不景気に対応するため、4月10日、政府は15兆円という過去最大規模の経済対策を打ち出しましたが、いくらおカネを注ぎ込んでも、国 民の一人ひとりが「おカネを使いたい」という気持ちをもてるようにしなければ、おカネはまわりません。せっかくの定額給付金にしても、あるアンケート調査 では50%近い人が「貯蓄する」と答えていました。おカネは循環しないと経済の活性化につながっていかないわけで、いくら政府が過去最大の経済対策を講じ ても、それが貯蓄にまわっていくようでは活性化につながっていきません。

    おカネを循環させて経済を活性化させるためにリーダーがやらなければならないことは、おカネを注ぎ込むことも必要ですが、まずは将来に向けて の「夢」を語ることだと思います。景気が悪化しているとか雇用が激減しているといった悪いことばかりではなく、国民が将来に希望をもてるような「夢」を提 示することが、いちばん重要なんです。

    たとえば、2016年のオリンピックを招致しようと東京都ががんばっていますが、その開催理念として「エコと平和」を掲げています。それなら オリンピックに向けて、ソーラーパネルや風力といった代替エネルギーだけで運用する世界で初めての施設を目指すなど、世界のどこもやったことのない「夢」 のあるオリンピックの実現を政府が率先して盛り上げ、国を挙げて取り組んでいくことだって考えられます。そんなオリンピックを実現するためにさまざまな技 術が生まれていくだろうし、その技術力だけでも日本経済の活性化につながるはずです。

    なにより、どこの国もやったことのないような「夢」のあるエコ・オリンピックを目指すことで、日本の国民は日本の将来に期待できるようになり ます。そうすると段々と皆の気持ちがワクワクしてくるにちがいない。これが重要で、ワクワクするような、高揚した気持ちこそが消費の原点なんです。国民が こぞって消費に向かえば、経済の活性化は一気にすすみます。そうした国民がワクワクできる「夢」を、わかりづらい内容や表現ではなく、「私はこういう国に したい」といった単純明快な形でリーダーに語ってもらいたいと思います。

    消費拡大のためにも子育て環境の整備を

    消費拡大のためにも子育て環境の整備を消費を盛り上げて経済活性化につなげていくために、ぜひ必要なことが、子育てのできる環境づくりです。子どものいる家庭や社会は文句なく楽しいし、それこそワクワクできます。確かに生活苦の方々もおられると思いますが、子供は笑いを提供してくれます。

    しかし現状は、なかなか女性が子どもを安心して産める環境になっていません。子どもを産んだ女性は子育てのために、仕事をやめて家庭にはいら なければならないケースが多いようです。女性の力を経済活動のなかで生かすことができてないわけで、経済活性化の面からは大きなマイナスでしかありませ ん。仕事を優先しようとすれば、子どもを産まないという道を選択するしかないということが起こってしまう。それでは"ワクワク"感が薄れ、消費という面で はマイナスになってしまいます。

    そうした二つのマイナスを無くすためには、会社や社会が協力して子育てのできる環境をつくりあげることが重要です。そのために会社は、お母さ んたちが働きやすい環境を積極的に提供していくべきです。例えば子どもたちが幼稚園や学校から帰ってくる時間には家にいられるように、フルタイムではなく 半日の勤務でも大丈夫な給与体系を整えるなど、方法はいくらでもあります。ローソンは在宅勤務制を導入しますが、それによって、お母さんになっても子育て と仕事が両立できるわけです。そういうことを多くの会社がやるようになれば、子どもの数が増えてワクワク感のある社会になり、それによって消費も拡大して いきます。そのためには、会社の子育て支援制度導入には税制面で優遇するなど国としてやるべきこともたくさんあります。

    社会的インフラでいえば、保育所の整備が叫ばれていて、認可保育所の待機児童は約2万人といわれています。現在の多くの幼稚園も働くお母さん を支援する体制になっているとはいえません。早い時間に園児を帰してしまう現在の体制では、お母さんが会社勤めするには難しく、お母さんは仕事をあきらめ ざるをえない。また、朝早くから夜まで児童を預かる幼稚園は公立に多いのですが、常に数が足りず待機児童がすごく多いのが現状です。その問題を解決するに は保育園や幼稚園の数を増やしたり、保育士の数を増やしたり待遇の改善をはかるなど、根本的なところから見直していく必要があります。そうした改革には制 度的なものもからんでくるので、まずは国や地方自治体が率先してもっと徹底して取り組む必要があるわけです。

    所得移転で消費拡大を

    消費でも子育てでも、中心になるべき年代層は20~40代です。しかし家のローンを抱えていたり、現在のように景気が厳しいなかでは、この年代層が消費に向かえないし、積極的に子どももつくれない、ということになってしまっています。

    こうした状況を打ち破るためには、高齢者から20~40代への「所得移転」を考えるべきだと思います。具体的には、贈与税の見直しです。現 在、贈与税がかからないのは、1年間にもらった財産の合計が110万円以下の場合です。この額を500万円に増やすだけでも、高齢の親から20~40代の 子への所得移転が、かなり進むはずです。今回の景気対策では住宅関連のみを500万円プラスにしていますが、使い途を制限しないで枠を増やさないと、ほん とうの消費拡大にはつながりません。

    というのも、貯蓄などの個人金融資産残高は現在、1500兆円あるといわれていますが、その6~7割を65歳以上の高齢者が所有しているから です。過去最大という今年の国の予算(一般会計)でも88兆円ですから、その17倍もの個人金融資産残高があるわけです。にもかかわらず、その大半を高齢 者が握っていることで、循環していない。眠らせてしまっているわけです。高齢者が子育てなど消費の需要が多い若い層、つまり自分の子に譲渡しやすくして世 の中で循環するようになれば、確実に経済は活性化します。それには、贈与税のかからない額を引き上げて、高齢者から若い層への所得移転が起きやすい環境を つくる必要があるわけです。

    所得移転が行われて若い層に余裕が生まれれば、「子どもを産もうかな」という気持ちにもなるでしょう。高齢者にしてみれば孫ができることで楽 しみができるし、世の中に子どもが増えれば明るい社会のなかで暮らすことになります。楽しいから生きたいと思うし、病気にもならない。そうした世の中にす ることが、最高の高齢者対策でもあるわけです。

    子育てができる環境づくりも、所得移転をしやすくすることも、根本にあるのは「社会を明るくするため」です。社会を明るくすることが消費を拡 大することになり、経済を活性化することにつながるからです。現在のような未曾有の大不況から脱出するためには消費者におカネを使ってもらうしかないわけ ですが、おカネを使うかどうかは心理的な要素が大きくかかわっています。だからこそ、「夢」があってワクワク感のある、明るい社会にして、消費者に「使お う」という気持ちになってもらうことこそが、最高の経済対策でもあるわけです。景気回復策を、そうした根本のところに立ち返って考えてみる必要があると 思っています。

    ダボス会議に出席してきました!

    2009年3月27日

    経済と政治における"世界のリーダー"が集うダボス会議

    世界経済フォーラム(ダボス会議)の様子「世界経済フォーラム」、通称「ダボス会議」に参加してきました。この会議は年に1回、スイスの地方都市・ダボスで開催されています。世界の経営者 が一堂に会して、現在グローバルレベルで抱えている問題を議論し、危機感を共有し、解決の糸口を探っていくというのが狙いです。隣にはコカ・コーラの会長 がいて、その隣にはペプシの会長、その隣にはネスレの会長……誰もが耳にしたことのある企業の社長・会長が集うフォーラムだけに、そうそうたる顔ぶれでし た。

    このダボス会議はどの人・企業でも行けるというものではありません。インビテーション、つまり招待があって、初めて参加できます。そうした中、事務局がローソンのイノベーションなどを評価し、ローソンを参加者としてふさわしいと選んでくれたことは非常に光栄なことでした。

    ダボス会議では経済やビジネスの問題だけでなく政治も大いに絡むので、有数の経済人やノーベル賞受賞の経済学者などだけでなく、プーチン氏 (ロシア)やブラウン氏(イギリス)、メルケル氏(ドイツ)などの現職の首相・大統領をはじめとする、トップクラスの政治家もたくさん出席します。日本か らも麻生総理が出席し、我が国がどういうことに貢献しているかなどのスピーチをしました。具体論があり、とてもよい演説でしたよ。アメリカからは、現職の 大統領は来ませんが、それに近い人たちが出席します。今回は元大統領のクリントン氏が来ていました。

    そうしたラインアップでありながら、スキー場くらいでしか名を馳せていないほどの小さなまちでの会議なので、ゲレンデがあるような山奥のごく 普通のホテルが会場だったのは意外でした。つまり、世界のリーダーたちが、議論をするためだけに来ているのです。そうした狭い会場で、目の前でリーダーた ちのオーラをひしひしと感じられたのは、とてもよい刺激になりました。

    会議で見えてきた"保護主義からの脱却"と"途上国のバックアップ法"

    2009年3月9日放送 NHK BS特集 「世界は危機にどう立ち向かうか」より (提供:NHK)また、ダボス会議では世界の現在の動きを感じられました。世界の動きは、第二の経済大国・日本にとって非常に重要なことです。それを先読みするのにはとてもよいフォーラムでした。

    ダボス会議では、貿易の保護主義に警鐘を鳴らしています。世界が保護主義に向かっていくと、世界経済はたいへん厳しい状況になってきます。モ ノ作りで成り立ってきた国・日本にとっては、とりわけマイナスです。せっかくものづくりに強い国なのに、つくったものを輸出できなくなりますから。いま、 アメリカは銀行を救済するかわりに「バイアメリカン」条項、つまり「アメリカ国内の公共事業には、アメリカで作られたものを使え」という保護主義の動きを 見せています。オバマ大統領のリーダーシップで是非ともこれは止めてもらいたいものですね。一方保護主義を抑制する為には例えば日本や中国にも「もっとア メリカのものを買え」という圧力がかかってきます。国内消費はGDP(国内総生産)の約6割を占めていますので、この「買う」は政府よりも国民に課される ことになります。となると、どうしても日本は内需の拡大が必要で、いろいろな規制を緩和し、新しい産業をつくる等、政策的にいろいろやっていかなければな りません。ほかの国の物をまったく買わずして「ウチの国のものを買ってください」と言うのは虫が良すぎますよね。つまり、それだけ日本もグローバル社会の 中で生きてきているわけです。いまや日本は国内だけでは経済が立ち回りません。そういう中で日本は何をすべきか、また企業活動にどういった影響があるか。 そういうことを考えさせられかつ将来を読む材料を与えてもらえる会議でした。

    一方で"社会起業家"の会議に出席して、企業が発展途上国に進出する際は、自分の商品を売るだけではなく買っていただく国々に理解されるよう に努めること、すなわち経済の合理性ばかり考えるのではなくその国への貢献が重要だと考えさせられました。社会起業家を教育しバックアップするのもいいの ではないかと。例えばノーベル平和賞を受賞した、社会起業家として有名なバングラデシュのユヌス氏。「グラミン銀行プロジェクト」――貧困層にのみ無担保 で貸し付けを行うマイクロクレジット事業――のことを聞いて「なるほど」と思いました。これまではただ自分の商品を売っていくだけだったところを、困って いる人たちの為にインフラを整え、井戸を掘り、水をつくりながら、そこでどのように自分の商品を売っていくかに絡めていく。グローバル企業にこの様な貢献 がないと発展していく途上国にこれから入っていくのは難しいでしょう。これまではODA(政府開発援助)で国が行うことが多かったですが、そういうものに 企業も参画していくと国との距離感がもっと小さくなるのではないでしょうか。

    ローソンが出店している中国でも、中国の人達の生活向上を応援すべく何かしらの企画をやってみたい気がしますね。また、それをやらずにして中国で本気でモノ売りをやっていくのは仲々、逆に難しいのではと思います。

    これまでファンド等で大金持ちになったたくさんの欧米人、いわゆる資本主義の権化のような人たちが、社会の役に立つためにNPO(民間非営利団体)・NGO(非政府組織)を始める動きが高まっています。

    おもしろい構図ですよね。180°の転換なんですから。「お金を運用して儲ける」ということから「もっと地球規模で世の中をよくしなくてはな らないのでは?」と疑問を持ち始めたんでしょうね。世界ではこういう気運が高まっているのですが、正直言って、日本にいるとなかなか気づかない部分でもあ りました。それがダボス会議を通じて見えてきたことは、私にとって大変プラスになりました。

    逆に「改善すべきでは」と思った点もありました。それは、アジアのプレゼンスが弱いところです。今回のような全世界的な経済危機の中であって も、まだまだ主導権を握っている(握っていきたいと思っている)のは欧米です。これからはその中にもっとアジアが入っていき、大きな枠組みの中で「欧・ 米・亜」の三極でやっていくことが、世界には必要となると思います。そして、その「亜」の中心は日本と中国になっていくでしょう。その日本の企業の中から 招待された者として、この機会にローソン、日本の最も進化しているコンビニエンスシステムとしての「ブランド」として認められていくよう頑張らなければ、 と、気を新たに引き締めている次第です。

    もちろん気を引き締めるだけでなく、ダボス会議のテーブルでの議論でローソンの考えをしっかり述べてきました。「単純に儲ければよいという世 の中から社会との共生が重要だ。だから弊社の企業理念を数年前に『私たちは"みんなと暮らすマチ"を幸せにします。』に変え、その浸透を進めています。新 しい資本主義のあり方は、社会との共生がしっかりと出来る企業を目指すところにあるのでは?」という発言をしました。発言に「あなたの企業理念こそ、世界 が求めていかなければならない代表的な社是ですね」という各国の方々からの賞賛を得て、少なからずの手ごたえも感じさせてくれました。

    今回は初めてのダボス会議参加でしたが、これからも出席していく機会があれば、列席のトップ同士ともだんだん通じ合って「一緒に何かやっていこうよ」と、保護主義を超える、世界に求められる企業の一端になれるかもしれません。

    そのためにも、ローソンのトップとして、また世界に冠たるコンビニエンスシステムの最先端企業を自負できるべく、そして企業理念の実現による企業価値向上に、更に精進し努力していきたいと思いました。

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