HOME>−社長コラム−「新浪です」

−社長コラム−「新浪です」

−社長コラム−「新浪です」

2010/01/08

第10回:企業の存在意義を考えてみませんか?

新年あけましておめでとうございます。2010年が始まりました。
世界中が転換期と呼ばれる時代です。日本そして世界はどこに進もうとしているのでしょうか。経済は、環境は、そして企業は――。

■ドバイでの会議にて

今月27日よりダボス会議が開催されます。政財界を初めとする各界のリーダーたちの連携を通して、世界の経済・社会の現状の改善に向けて取り組むことを目的として毎年開かれています。国際的な非営利団体である「世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)」が毎年1月に開催している年次総会の通称ですが、スイスのリゾート地「ダボス」で開かれることから、こう呼ばれています。

そのダボス会議を開くにあたって、事前にレポートがつくられます。そのための会議が世界各国の有識者を集めて昨年11月にドバイで開かれ、私も出席してきました。そこで多くのことを語り、多くのことを学んできました。

ドバイの会議ではいろいろなセッションがありましたが、そのなかの一つ、「Long Term Investing(長期投資)」にも参加しました。参加者の多くがペンションファンド(年金基金)など機関投資家の関係者で、そこで私は「社会と共生すべく長期投資が重要だ」と訴えました。たとえばR&D(Research and Development=研究開発活動)は、企業が将来にわたって成長していくために、それによって社会を豊かにし、一人ひとりの幸せを実現するために絶対に必要な投資です。それは結果がでるまでに時間のかかる投資でもあるので、長期投資をしてくれる存在が重要になってきます。

アメリカのGDP(Gross Domestic Product=国内総生産)が最近になって上がってきているといっても、R&Dへの投資は下がってきています。これでは将来的に先細りになってしまい、一人ひとりの安心を実現することも困難になってきます。こんな状況だからこそ、ペンションファンドのような機関投資家が長期投資を増やすことが重要なのです。それが機関投資家としての「Social Responsibility(社会的責任)」でもある、と会議で私は訴えました。

残念なことに余り共感を得ませんでした。短期間で大きなリターンを得ることだけが、ペンションファンドなど機関投資家の最大の関心事なのです。それだけを追求しすぎたことが、「リーマン・ショック」を引き起こし、世界的な大不況を招いてしまったというのに、全く反省がありませんでした。

■企業は何のためにあるのか

ドバイでの会議の出席者が、「反省のない人たち」ばかりだったわけではありません。「Values(価値)」というセッションがあり、ここでは「何のために自分たちは働くのか」とか「企業は何のためにあるのか」という議論を延々とやりました。

利に走りすぎたためにリーマン・ショックのようなことが起きてしまい、現在、世界中が苦しい状況におかれています。そんなときだからこそ、原点にもどって働くことの意義、企業が存在する意義を問い直してみることは大事なことだと実感できました。

私達コンビニ業界にも複数の企業が存在します。同じような価値観で同じようなことをやっているのなら複数が存在する必要はなく、一つにしてしまえばいい。しかし、何かしら違う価値を各社がもって、それぞれに実行しています。だからこそ、複数の企業が存在する意味があるわけです。

そういうことが、グローバルな視点、多様性のなかで議論していくと、だんだん見えてきます。議論して議論していくと、私たち企業のもっている価値の大きさがはっきりしてくるんです。それに気付ければ、利に走るだけにはならない。働く人や社会を危機に追いこむようなことにはならないわけです。

興味深かったのが、このような話題に一番関心を持ったのはインドの経営者達だったということです。インドも日本と同じクリード(信念)を持っていると感じました。

ローソンは3年前、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」という企業としての基本的な姿勢を決めました。「これに合わないことはやらないし、合うことはトコトンやります」と、数億円かけて新技術を駆使したエコ店舗や電気自動車導入など、具体的な事例と共にセッションで話したら、みんな驚いていました。しかし、だからこそローソンという企業が存在する意味があるわけです。こういう根源的なことを忘れているから、世の中が危機的状況になってしまうのです。世界の人が集まって、根源的なことについて議論し、確認し合ったことは大きな意義があったと思います。

■信頼関係を重視

さらに「Social Benefit & Employment(生活保障&雇用)」というセッションで私は、大不況という嵐のなかでも、ローソンという同じボートに乗っている社員に「ボートを降りろ」とはいわない、という話をしました。「ボートを降りろ」といって社員を減らさなければ、つまりリストラをやらなければ利益が出せないだろう、と言われました。そんな考えでリストラを徹底しないから日本の株式市場は低迷しているんだ、との意見もありました。

しかしローソンは、他社が大リストラをやっている最中でも、リストラに頼らない危機の脱し方を実行しています。それは、「今は給料を下げるけれども我慢してくれ。その代わり、儲かったときには必ず還元する」と社員に頭を下げ、それを社員に受け入れてもらうことです。みんなが我慢すれば、誰もボートから降りなくても危機を乗り切れます。社員が安心して働くことができるわけです。

そして、そういう信頼関係があるからこそ、一緒になって自分たちの会社の未来をつくっていくことができます。みんなと暮らすマチを幸せにする、という姿勢を実践できるんです。それが、ローソンが存在する価値でもあります。

企業が利にばかり走ると、そういう一人ひとりの幸せ、心の安心を軽んじることになってしまいます。そのために企業と社員の信頼関係が失われ、結果として企業の成長が鈍化してしまうということになるわけです。社会全体としての活力も失われます。今求められていることは、企業が全力で「安心して働ける場」をつくっていくことではないでしょうか。

もともと日本の企業は、信頼を重視する姿勢をもっていました。それが薄らいでしまったことが、日本企業の低迷を招いているような気がします。だからこそ今、一人ひとりの幸せを大事にする姿勢を取り戻し、心の安心、信頼関係を取り戻すことが大事になってきているのではないでしょうか。そういう姿勢を世界に向けて発信していくことが必要になってきていると思います。

このページのトップへ